技術リスク管理のための社会システムの歴史的発展過程に関する研究 |
三上 喜貴 |
長岡技術科学大学 工学部 教授 |
技術リスクを管理する社会システムの主要な構成要素として、事業者、消費者、労働者、規制当局(政府)、保険会社、検査機関、技術者協会等の行為主体があるが、明治以来の日本の工業化過程では、自己責任原則に基く民間部門が未成熟なまま近代技術の導入を進めざるをえなかったため、政府主導・法令主導・事前規制型の社会システムが構築され、民間部門における保険事業、独立検査機関や専門職集団たる技術者協会の積極的参加を促す社会システムの形成が遅れた。こうした社会システムはそれぞれの地域における文化や歴史を反映しており、単一のモデルへと
収斂し得るものではないが、社会システムの制度設計にあたっての基本的な枠組みとそのバリエーション(変化形)とを、産業革命初期の淵源まで辿って歴史的文脈、国際比較の文脈から明らかにすることが本研究の目的である。 |