オーラルヒストリーによる戦後技術の調査研究—電気技術について— |
原島 文雄 |
東京電機大学 学長 |
技術開発は人間の知的営為の中でも最も高度なもののひとつであると同時に、意外なほどに多くの偶然と多彩な人間模様が介在する壮大なドラマでもある。戦後の日本の技術開発の実態がどのようなものであったのかを、実際に開発に携わった当事者から聞くことは、特許や論文といった既公開の文書類では得ることのできない貴重な情報を得る上で極めて有効な調査である。すなわち、開発プロセスの細かい情報のほかに、開発に携わった関係者の心の交流や人間関係の力学、予想だにしなかった秘話といった情報が得られ、技術開発が決して知力のみの所為ではなく、その営為の本質の何たるかを知ることができる。これらは当事者だけしか知りえない情報であり、これを掘り起こさなければ決して表面に現れることはなく、やがては歴史のかなたに埋没してしまうものである。 |