近代社会における法令・基準の整備は、技術の革新の影響を大きく受けている。ときには、法令・基準が規制として働き、技術革新が止められてしまったり、その方向性が決められてしまったりする。反対に、法令・基準の整備によって、新たな技術革新が生まれることもある。
本研究は、社会資本を構成する建築物、都市施設を例に、法令・基準とそれに関わる技術革新が、どのような関係をもっていたのか、また、どのように影響しあってきたのかを研究しようとするものである。
建築物、都市施設は、人々の生命・財産に深い関わりをもつものであり、それらの安全性を確保するための技術は、建築基準法・消防法をはじめ、多くの法令・基準と密接に係わっている。このため、本研究の対象として最も相応しいものといえる。
研究を進めるにあたって、具体的には、建築物や都市施設の保全の方法、災害による被害と事前・事後の対策、日本と先進諸国や近隣諸国との比較という視点を重視する予定である。それによって、日本の特徴的な技術革新のあり方を検討することが可能になり、今後の技術革新に必要とされる視点を導く糸口を得ることができると考えている。
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