
「技術の系統化」という語は一般には耳慣れないものであろう。この語を最初に用いたのは国立科学博物館であり、実際にそれを実施したのも同館が初めてであることを思えば当然であるとも言える。
本論文の著者は、「技術の系統化」を国立科学博物館で取り上げるに際して、外部有識者として議論に加わり、その骨格を形成する上で貢献した。「技術の系統化」について、その意味するところ、意義について論じた最初の論文であると思われる。
そもそも何故系統化が必要なのか、から始まって、意義、課題について論じ、産業技術史研究の今後のあるべき方向をも呈示している。

(No.001)

国立科学博物館で「技術の系統化」に着手して一年が経過した時点で、「産業技術資料の系統化と技術革新研究」の著者が、この間の系統化経験を踏まえた上で、系統化研究の問題点について述べている。
技術発展の類型化を著者の視点から行っており、4つの型に分けている。最後に、著者の持論であり、上述の論文でも触れている「技術革新学」の必要性を系統化と関係付けて訴えている。

(No.005)

19世紀にイギリスで発明されたガラス製真空二重瓶は、当初探検家向け携帯用魔法瓶として販売された。日本においては戦後の経済成長に伴い1980年頃には卓上ガラス製魔法瓶として各家庭に普及した。その後中瓶の材質がガラスからステンレスに替わり各社独自製法でのステンレス製真空二重瓶の開発が行われた。さらに携帯用ステンレス製魔法瓶は直飲みの新たなニーズを創出して販売拡大の起爆剤となった。本報告書ではガラス製魔法瓶の中瓶製造及び完成品に必要な機能と信頼性についての技術開発とその変遷を、またその後登場したステンレス製魔法瓶の製造技術や用途開発、主要部品の進化・変遷を系統化し調査を行った。さらにステンレス真空二重瓶技術の調理用品等への応用例や異業種との共同開発による用途事例などを紹介する。

ガラス製中瓶の構造

ガラス製中瓶(太瓶)エアーポットの例(象印マホービン)(1985年)

ステンレス鋼製魔法瓶(日本酸素株式会社)(1978年)

(No.144)